アントロポゾフィー医学をめぐる情報
アントロポゾフィー医学
アントロポゾフィー医学は、独自の診断法と治療法をもつ「統合医療」として、1921年に構想されました。
以来、発展を続け、現在では60以上の国々で実践されています。
アントロポゾフィー医学は、自然科学的・アカデミックな医学とルドルフ・シュタイナーのアントロポゾフィー(人智学)をつなぐものです。
倫理と自己理解
アントロポゾフィー医学では、一人ひとりの患者と、その人のための個別の治療法が中心になります。
診断および治療に際しては、患者の年齢、体質、人生の軌跡(バイオグラフィー)における現在の状況、そして心(魂)や精神(霊)の状態が考慮されます。
[続きを読む]
また、記録資料の作成も行われます。
これはおもに代表的な個別ケース、およびアウトカム研究に基づくものです。
無作為二重盲検法は、方法論にかかわる理由から、限定的にしか用いられることはありません。
アントロポゾフィー医学は、医師としての一般的な倫理に加えて、ルドルフ・シュタイナーがその哲学的な主著『自由の哲学―ある近代的世界観の基本的特徴―』で構想した「倫理的個人主義」、そしてそこに描き出された人間像を基盤としています。
この人間像は、病んだ身体のなかにも、障害をもった身体のなかにも、一人ひとりの人間の永遠なる個性を認めるのです。
これによって、自然科学的な医学に内在する唯物的な世界観が、世界の精神的(霊的)基盤に対する認識によって補完されることになります。
こうした総合的な倫理観のなかには、輪廻転生(生まれ変わり)の思想や、人間の限りない発達(進化)の可能性への信頼も含まれます。
予防医療においては、この発達や進化という考え方に基づいて、瞑想の修練、自己教育、自己発達が中心的な位置を占めています。
こうした予防医療の考え方を促進するために、多くの国々で患者による団体や連合が結成され、精神(霊)、心(魂)、体のそれぞれの次元における健康促進の普及に努めています。
治療のスペクトル
アントロポゾフィー医学の実践は、一般医療、家庭医療のほかに、外科から、内科、小児科、腫瘍学、婦人科、産科、神経科、精神科まで、すべての医療分野にわたります。
[続きを読む]
薬剤は特別の製薬工程によって製造されます。
これらの薬剤は、ドイツではアントロポゾフィー薬剤の認可のために特別に設置された審査委員会(連邦医薬品研究所委員会 C )によって審査され、これまでに医薬品モノグラフが出版されています。
アントロポゾフィー医学おける治療薬の発見、製造、適用は、アントロポゾフィーの人間理解と自然理解に基づいて行われます。
特によく知られている薬剤として、がん治療のためにアントロポゾフィーの世界観から生み出されたヤドリギ製剤(Abnoba viscum®, Helixor®, Iscador®, Iscucin®, Visorel®)があります。
さらなる治療手段として、次のものが挙げられます。
-
造形療法、絵画療法、言語形成療法、音楽・歌唱療法、また新たに医療に導入された運動療法としてオイリュトミー療法があります。
-
リズム・マッサージ、リズム・オイリングその他、看護における数多くの効果的な外用療法があります。
また、1920年に創始されたボートマ体操を基盤として、ボートマ体操療法およびスペーシャル・ダイナミクスという特別の医療体操が開発されつつあります。
-
会話療法およびバイオグラフィー・ワーク。
これには自己発達と瞑想修練に関する話し合いが含まれます。
-
依存症患者のための治療プログラム。
これは国際的に評価されているプログラムです。
-
教育者との密な共同作業(学校医の活動の促進)、またヨーロッパ26カ国、その他12カ国の350以上の施設で実践されている治療教育や社会治療活動(キャンプヒル運動の施設を含む)。
養成と学術的基礎
アントロポゾフィー医学における養成は、正規の大学における医学の修得、および専門医としての研修を終了していることが前提となります。
[続きを読む]
アントロポゾフィー医学における養成は、正規の大学における医学の修得、および専門医としての研修を終了していることが前提となります。
その基盤のうえに、アントロポゾフィーの精神科学(霊学)、その研究方法、オイリュトミー療法や芸術療法に関する知識の修得や、芸術的能力の育成がなされます。
養成には、理論と実習を合わせて、少なくとも3年を要します。
現在提供されている医師養成セミナー、仕事と並行して受講できる養成コースに関しては、各国のアントロポゾフィー医学のための医師会にお問い合わせください。
病院内の養成機関は、ドイツ、スイス、イギリス、スウェーデン、オランダ、イタリアにあります。それ以外にも、広範な研修の機会が提供されています。
[関連項目へのリンク]
歴史と現在の広がり
アントロポゾフィー医学は、1920年代の初めに、医学博士イタ・ヴェークマン(1876−1943)と数名の医師、そして哲学博士ルドルフ・シュタイナー(1861−1925)の共同作業によって創始されました。
[続きを読む]
1921年、ドイツのシュトゥットガルトとスイスのアーレスハイムに、最初の臨床治療研究所がつくられました。
これらの研究所に併設されていた薬剤研究所が、後に製薬会社ヴェレダ社とヴァーラ社に発展することになります。
シュタイナーとヴェークマンは、共同で基礎文献『精神科学(霊学)の認識に基づく《医術拡張の基礎づけ》』を執筆しました。
その後、アントロポゾフィー医学は、診断学の分野においても、治療の分野においても、さらに研究され、臨床的にも適用されて、持続的に発展してきました。
アントロポゾフィー医学は、個別の開業医による普及と並んで、数多くの病院や施設において実践されてきました。
ドイツ、スイス、スウェーデン、オランダ、イタリア、アメリカ合衆国、ブラジルには、そうした病院や療養所、医療施設があります。
さらに、芸術療法、オイリュトミー療法、対話療法なども広く実践されています。
今日、アントロポゾフィー医学を実践する開業医は、ヨーロッパの大半の国々、また南アメリカ、北アメリカ、ロシア、南アフリカ、エジプト、日本、オーストラリア、ニュージーランドで活動しています。
また、そうした地域の多くでは、アントロポゾフィー医学の医薬品も販売されています。
アントロポゾフィー医学における保健政策の展望
さまざまな国々におけるアントロポゾフィー医師の団体が連携し、国際アントロポゾフィー医師会(IVAA)を設立しました。
[続きを読む]
「国際アントロポゾフィー医師会」(IVAA)は、法的・政治的分野で、アントロポゾフィー医学を代表するという課題を担います。
世界中の医師と患者の「治療の自由」を擁護し、また医療における多元主義を促進するために活動します。
その際、同様の目的のために活動している他の医師の団体とも力を合わせます。
IVAAは、特に次のような目標に向けて力を尽くします。
たとえば、欧州連合(EU)の研究費が、補完医学(complementary medicine)に、そしてそれとともにアントロポゾフィー医学に割り当てられるように働きかけます。
そうすることで、アントロポゾフィー医学に関する記録研究を継続し、この治療法の有効性を独自の基準によって、すなわちその方法論に内在する基準によって実証し、評価することが可能になるからです。
アントロポゾフィー医学がどのように社会の保健制度に法的に組み込まれるかは、国によって異なります。
スイスでは、アントロポゾフィー医学の医薬品は、「特別医薬・検査リスト」に記載されています。
ドイツでは、アントロポゾフィー医学は、薬事法(AMG)によって、三つの特殊療法の一つとして承認されています。
他の二つは、ホメオパシーと植物療法です。
欧州レベルでは、アントロポゾフィー医師と患者たちは、医薬品の登録ないし認可、もしくは医薬品の費用弁済を決定するすべての委員会に、アントロポゾフィー医学に精通した専門家が加わるように働きかけています。
アントロポゾフィー医学は、自然科学に基づく医学と対立するものではなく、それを拡張するものとして理解されます。
それがアントロポゾフィー医学の「自己理解」なのです。
現時点で、アントロポゾフィー医学は、アメリカ合衆国/サンフランシスコ、ドイツ/ハンブルク、スイス・ベルンの大学で、講師もしくは教授によって教科として教えられています。
また、ドイツ/ヴィッテン・ヘルデッケの大学では、正規の医学と並行して、アントロポゾフィー医学を修得するコースが提供されています。
その他にも、ヨーロッパ内外の数多くの大学で、個別の講義、もしくは連続講義のなかで、アントロポゾフィー医学がさまざまなかたちで取り上げられています。
アントロポゾフィー医学の医師たちは、患者たちと連携して、それぞれの地域における人々のニーズにふさわしい保健制度をつくりだすために努力しています。
ここでは特に、患者や被保険者の、健康保険組合や医療機関に対する自己決定権を支持することを重視しています。
さらなる情報は、IVAA(国際アントロポゾフィー医師会)のホームページ(英語)から入手できます。
DVDと情報誌
アントロポゾフィー医学に関する情報はここでご覧になれます。
[関連ページへ]