International Postgraduate Medical Training (IPMT)
国際アントロポゾフィー医学ゼミナール / IPMT
「国際アントロポゾフィー医学ゼミナール」(医師と医学生対象)にようこそ。
2007年度IPMTのプログラムもご参照ください。
アントロポゾフィー医学における養成と研修:認定
アントロポゾフィー医師の資格に関する国際基準
- アントロポゾフィー医師としての資格を取得するためには、正規の医学教育課程を終了し、医師免許を取得していることが基本の前提条件となります。
- アントロポゾフィーおよびアントロポゾフィー医学の基礎を、全日制であれば少なくとも1年、短期間のコースであれば少なくとも3年にわたって学んでいること、もしくは通信教育を含め、上記に匹敵する個人的な集中的学習を行っていることの証明が必要です。
- さらに、少なくとも2年間の実習を行ったという証明が必要です。 この実習は、該当国のアントロポゾフィー医師会もしくはゲーテアヌム医学セクションによって承認された病院や医院、あるいはアントロポゾフィー医学を実践する一般医や専門医の診療所で行われるものとします。 または、志願者自身の診療所で、メンター(指導医)の指導のもとに実習することも可能です。
- 少なくとも2例の症例報告書の提出が必要です。 また、志願者は、指導医との話し合いのなかで、自分がアントロポゾフィー医学の基礎を自立的に取り扱えることを明らかにしなければなりません。 その他の点では、該当国のアントロポゾフィー医師会の定めた規則が、アントロポゾフィー医師の資格証明書の発行手続きに適用されます。 まだ十分な学習と実習の機会が提供されていない国の医師に対しては、ゲーテアヌム医学セクションにおいて、志願者のアントロポゾフィー医師としての資格を認め、証明書を発行する手続きが確立されています。
- 各国のアントロポゾフィー医師会は、適切な範囲で、暫定的な規則を定めるものとします。
- 資格証明書を更新していく必要があるかどうかは、各国のアントロポゾフィー医師会が個別に決定できるものとします。
- この国際基準は、2002年9月20日、アントロポゾフィー医学協会の代表者会議によって認められ、その後2003年1月19日にアントロポゾフィー医学協会国際連盟(IVAA)によって承認されました。 この国際基準は、2003年9月18日より効力を有します。
アントロポゾフィー医学における養成と研修:研修の実際
IPMTの構想と作業形態
IPMTでは、三つの点を踏まえて養成を行います。すなわち―
- 新しい診断能力の基盤として、感覚の訓練、および積極的な思考法の訓練を行います。
- アントロポゾフィー医学の薬剤、芸術活動、オイリュトミー療法、その他の方法を用いた診断術と治療への実践的な入門。
- 自分自身の医師としての職業を理解し、治療における人間関係を築き、治療共同体を確立するために必要な、職業倫理および瞑想的修練を行います。
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新しい診断能力の基盤としての感覚と思考の訓練について
午前中は、次の三つの活動に分けられます。
1. 最初に、オイリュトミーという運動芸術の実習を行います。 このオイリュトミーは、第一次世界大戦の前に、ルドルフ・シュタイナーが運動芸術家たち、そして言語造形家であったマリー・シュタイナーとの共同作業のなかで開発したものです。 自然、人間、そして芸術のなかには、さまざまなプロセスが働いています。 そうしたプロセスは、「動き」のなかに現れることによって、目にみえるものとなります。 つまり、オイリュトミーの動きは、象徴的な性格のものではなく、自然界に内在するさまざまな「形成運動」や「造形パターン」に対応しているのです。 そうした「形成運動」や「造形パターン」は、自然界の形態言語であるとともに、人間の言語―すべての言語に共通する「根源的アルファベット」としての母音と子音―にも対応しています。 私たちはこれらの動きを実際に動いて訓練することで、自然や人間のなかに働く形成・造形プロセスに対する繊細な感覚を身につけることができます。 そして、それは病気と治癒をもたらすプロセスを繊細に感じとる感覚へとつながっていくのです。
この養成コースの第一週目には、基本となる母音と子音を学び、その動きを実習します。 また、それらの「動きの型」に対してルドルフ・シュタイナーが表したスケッチを取り上げます。 その後の第二週、第三週では、音や音程に対応する動き、さらには惑星や黄道十二宮という宇宙的な徴に対応する動きを学んでいきます。
2. J.W.ゲーテ(1749−1832)による現象学的な研究方法について、参加者全員に対して短い説明を行った後、小グループに分かれて、観察実習を行います。 ゲーテは次のような箴言(アフォリズム)を残しています。
もしこの眼が太陽のごときものでなかったなら、
太陽をこの眼で見ることもなかったはずだ。
もし私たちのなかに神自身の力が宿っていないのであれば、
神々しきものに私たちが心惹かれるはずもないのだ。自然現象のなかには、物質の「四つの凝集状態」―もしくはアリストテレスの「気象学」でいうところの「四大元素」―が見られます。 つまり、物質の固体状態(力学の法則)、物質の液体状態(水力学の法則)、物質の気体状態(空気力学の法則)、そして物質としてはもはや記述不可能な純粋な「熱状態」(熱力学の法則)の四つです。 ゲーテによれば、これらの四つの状態は、人間の心(魂)と精神(霊)の内的体験や活動能力と直接的に関連しています。 ゲーテは生涯をかけて、この関連を描き続けました。 この関連は、次のような言い方で簡潔に言い表すことができます。 すなわち、「同じものが、同じものを認識する。」もしくは、このようにも言えるでしょう。 「眼は、光に触れることによって、光を知覚するための器官として形成される。 同様に、健康な足の骨格は、歩くことによってのみ発達することができる。 つまり、どのような器官も、その器官が受け持つ機能に触れることによってのみ、その機能を十分に働かせることができるようになる。 したがって、人間は、自分が何らかのかたちで体験し、感じ、考えることができるものでなければ、知覚し理解することはできない」と。
そのような考え方から、ゲーテは自分自身の倫理的・宗教的な生活態度を次のように言い表しています。 「人は、自分が愛するものしか知りえない」。
認識の力としての「愛」を育成すること、そして精神的(霊的)な共感を身につけていくこと、それがここでの活動のさらなる目標です。 ゲーテによれば、それは「観察しようとする対象に即して、その対象にふさわしい観察方法を見出していく」プロセスなのです。
3. 動き、そして自然観察に即した心的(魂的)体験に続く第三のステップは、思考の訓練です。 ここでは毎年、ルドルフ・シュタイナーとイタ・ヴェークマンが共同で著した『医術拡張の基礎づけ』の1章を用います。 参加者全員に対して短い説明を行った後、ゲーテ主義的観察の実習を行った同じ小グループのなかで学習を続けます。 1章という全体を見通せるテクストに基づいて、思考の訓練の道を歩んでいきます。 それは次の四つの段階を踏まえることになります。
- テクストを丁寧に読み、段落に番号を付けていきます。 記述され、語られている内容と取り組みます。 考えのつながりが理解できなかったり、さらなる問いが出てきたりするところでは、用意された時間内に十分な答えが見出せない場合は、それを書きとめておきます。
- 第一段落から最後の段落までの首尾一貫した思考過程をたどっていきます。 ある考えは、べつの考えとどのようにつながっているでしょうか? どこかで思考の糸が一見断ち切られ、また別の箇所で取り上げられるのを待っているということはあるでしょうか? どこかで新しい考え方が登場し、― 一見、関連が見出されないままに ― 第一、第二の考え方と並存しているように見えるところはあるでしょうか? 思考の「赤い糸」はどのように続いているのでしょうか? 私たちは、ルドルフ・シュタイナーが展開した思考の関連を自分自身で再構築することができるでしょうか?
- これまでの第一、第二段階の作業は、テクストの内容、またその内容が表現される思考形態と取り組むものでした。 しかし、この第三段階では、この章全体の構成(composition)を明らかにすることが重要になります。 この章の始まりと終わりは相互にどのように関連しているのでしょうか? 一つひとつの段落の流れ、そして思考の流れのなかで、いくつかの際立った点が現れているのでしょうか? あるいはすべては、最終的に重要な一つの頂点に向って配置されているのでしょうか? 思考の流れは、一つの考えからもう一つの考えが展開されていくような造形的なあり方をしているのでしょうか? インスピレーションのようなあり方、つまり一つの考えが次の考えに直接的に結びつくのではなく、一方の考えが他方の考えを照らしだすような、照応するようなあり方をしているのでしょうか? そのように、この第三段階では、章全体の内的・外的な構造のあり方を把握することが課題になります。 そうすることで、テクストをはるかに深く捉え、いわば芸術作品として、楽曲(構成/composition)として解き明かすこと、そしてこのテクストにおける思考関連の隠された側面に到る可能性が生じるのです。
- テクストと思考によって取り組み、理解していく作業の最後の段階は、そこで述べられていることの「本質」に到達する試みです。 ルドルフ・シュタイナーの精神科学(霊学)の研究は、超感覚的な経験を基盤としています。 シュタイナーはそうした超感覚的な経験を明瞭な概念や思考関連として捉えなおすことができました。 それによって、超感覚的な経験は、言葉によって捉えられるもの、現代人が通常の認識力によって跡づけ、理解することができるものとなったのです。 私たちは、シュタイナーが歩んだこの道を逆にたどりたいと思います。 つまり、言葉で書かれたテクストから思考の働きへ、そこから芸術的な現れへ、そして最終的に「認識されたもの」、「語られたもの」の本質そのものへ到りたいのです。
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診断法と治療法、薬剤学の実験
まず、『医術拡張の基礎づけ』(シュタイナー/ヴェークマン共著)のなかから、一つの典型的な症例を取り上げ、それに即していわゆる「人間の四つの構成要素」による診断法、またこの診断法に基づいて行われる治療法を学びます。 あるいは、講師自身が症例を紹介し、そこに適用される治療法を説明することもあります。 これは二日間の午後の時間に行われます。 必要な場合は、夜の時間を意識的に考慮に入れて、講義を行います。 また、症例や患者についての説明と並んで、アントロポゾフィーにおける薬学や製薬過程を理解するための「薬剤プロセス」の説明も行います。 この場合、第一日の午後には、診断法に重点がおかれます。 一つの症例のイメージ、その患者の具体的な状況をできるだけ丁寧に、できるだけ多くの詳細な事実とともに自分のなかに受容するとき、「このすべては私に何を語っているのか、私はそこから自分の治療の目的につながるようなこと、治療の手がかりとなるようなことをなにか聞き取ることができるだろうか?」と問うことになります。 私は夜、この問いを抱いて眠り、そこから新しい側面が見えてくるのか、それは一体どのようなものなのかを観察します。 民衆の知恵が伝えているように、「朝は、夕べよりも賢い」からです。
夜というものを精神科学(霊学)によって考察すると、次のことが分かります。 つまり、私たちは昼間は、感覚の助けを借りて、すべてを物質的・物理的な事実に即して観察するのに対して、夜間には同じ事柄や事象を社会的・道徳的に、すなわち心的・精神的(魂的・霊的)な見地から考察するのです。
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職業倫理、および瞑想と自己教育による内的進化の道
一日を振り返り、また翌日に目を向け、参加者からの具体的な問いかけに即して、アントロポゾフィーにおける内的瞑想の修練や自己教育の道の基本要素を説き明かしていきます。 その際、短い全体集会の後、夕べの一時を小グループで過ごすことにも有意義でしょう。 特に、そこにさまざまな職業グループの代表者が参加し、それぞれの職業に特異的な職業倫理の問題を集中的に取り上げることも大切です(心理療法士、歯科医、看護師、医師、その他)。
IPMTの5ヵ年プログラム
国際アントロポゾフィーゼミナールは、5年にわたるプログラムで構成されています。
第1年:
アントロポゾフィー医学の方法論、診断法、治療法への入門。 アントロポゾフィー医学の薬剤はどのように創られ、どのように使用されるのか。 その実践例。 人間理解に到る内的・瞑想的な道の概観。ここでは、薬剤と瞑想活動がどのように免疫系と自己治癒プロセスを刺激し活性化するかを具体的に理解し、その理解を基盤にして、人間をその情緒(魂)と精神(霊)の次元において捉えます。
第2年のプログラムへの準備として個人もしくは小グループで学習するための推奨図書:
- ルドルフ・シュタイナー著『いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか』邦訳筑摩書房2001 / 『いかにして高次の世界を認識するか』邦訳イザラ書房2001,(GA10)
Rudolf Steiner: How to Know Higher Worlds - the Modern Path of Initiation. Anthroposophic Press Inc. Hudson, NY, USA 1994- ルドルフ・シュタイナー著『神秘学概論』(GA13) 邦訳イザラ書房1977,筑摩書房1998
Rudolf Steiner: Occult Science. GA 13. Anthroposophic Press, NY, USA, 1972.- ルドルフ・シュタイナー/イタ・ヴェークマン共著『精神科学(霊学)の認識に基づく《医術拡張の基礎づけ》』(GA27)
Rudolf Steiner, Ita Wegman: Fundamentals of Therapy. An Extension of the Art of Healing through Spiritual-Scientific Knowledge. GA 27, Mercury Press, Spring Valley, NY, USA 1999- オットー・ヴォルフ著『アントロポゾフィー医学とその薬剤』邦訳ルドルフ・シュタイナー研究所(近刊)
Otto Wolff: Anthroposophical Medicine and its Remedies. Mercury Press, Spring Valley, NY, USA 1988
第2年:
ゲーテ主義的な方法論を深め、観察力と思考力を構築することで、通常の医学の診断法を補完する、霊的診断法を輪郭づける。 生命・再生機能の系としての「エーテル体」(生命体)の理解。思考活動と生命活動が相互に連関し、身体と精神の健康を促進していることを具体的に理解する。 多様なケース・スタディや疾患管理の具体例のフォロー・アップ。
第3年のプログラムへの準備のための推奨図書:
- ルドルフ・シュタイナー/イタ・ヴェークマン共著『精神科学(霊学)の認識に基づく《医術拡張の基礎づけ》』(GA27)
Rudolf Steiner, Ita Wegman: Fundamentals of Therapy. An Extension of the Art of Healing through Spiritual-Scientific Knowledge. GA 27, Mercury Press, Spring Valley, NY, USA 1999- F.フーゼマン/O.ヴォルフ著『医術の基礎としての人間の形象』第1巻および第2巻
F.Husemann, O.Wolff: The Anthroposophical Approach to Medicine. Vol.2 and 3 (Vol.2 out of print, Vol.3 published 2005 in Anthroposophic Press, Hudson NY, USA 1982/1988/2003).
第3年:
心(魂)の発達。芸術の治療的作用、特にオイリュトミー療法、音楽療法、言語療法、絵画療法、造形療法。心理療法、精神疾患の治療。 内科、小児科、婦人科、集中治療、治療などの専門分野におけるアントロポゾフィー医学。
人間と地球の宇宙論的理解、射影幾何学、金属療法、医学的瞑想法との取り組み。
第4年のプログラムへの準備のための推奨図書:
- ルドルフ・シュタイナー著『治療教育講義』(GA317) 邦訳筑摩書房2005
Rudolf Steiner: Education for Special Needs. The Curative Education Course. GA 317, Rudolf Steiner Press, London 1998- ルドルフ・シュタイナー著『カルマの開示』(GA120) 邦訳イザラ書房1993,春秋社1996
Rudolf Steiner: Manifestations of Karma: Eleven Lectures Given in Hamburg between 16 and 28 May 1910. Rudolf Steiner Press, London 1995- ルドルフ・シュタイナー著『自由の哲学』(GA4) 邦訳筑摩書房2002
Rudolf Steiner: Intuitive Thinking as a Spiritual Path. A Philosophy of Freedom. Anthroposphic Press. Hudson NY, USA 1995- ルドルフ・シュタイナー著『医術の深化のための瞑想的考察と導き―若き医師たちへの講義』(GA316)
Rudolf Steiner: Course for Young Doctors, GA316, Mercury Press. Spring Valley, NY, USA 1993- ルドルフ・シュタイナー/イタ・ヴェークマン共著『精神科学(霊学)の認識に基づく《医術拡張の基礎づけ》』
Rudolf Steiner, Ita Wegman: Fundamentals of Therapy. An Extension of the Art of Healing through Spiritual-Scientific Knowledge. GA 27, Mercury Press, Spring Valley, NY, USA 1999
第4年:
「内なる治療者」、霊的健康の起源(サルートジェネシス)としての高次の自我を理解する。 輪廻転生とカルマの霊的法則、およびその病気と健康への関連。 患者のための瞑想法。研究方法論、学術的水準の記録作成。 日々の診療、病院、家庭医療などにおけるアントロポゾフィー医学。
第5年のプログラムへの準備のための推薦図書:
- グース・ファン・デア・ビー著『アントロポゾフィー医学の基礎・実習の手引き』
Guus van der Bie: Foundations of Anthroposophic Medicine. A training manual. Floris Books, Edinburgh 2004- ルドルフ・シュタイナー/イタ・ヴェークマン共著『精神科学(霊学)の認識に基づく《医術拡張の基礎づけ》』
Rudolf Steiner, Ita Wegman: Fundamentals of Therapy. An Extension of the Art of Healing through Spiritual-Scientific Knowledge. GA 27, Mercury Press, Spring Valley, NY, USA 1999
第5年:
心理社会的な病理と治療。 医師の役割と責任の社会的次元。 社会と個人の生活にとっての農業と経済の役割。 予防医学としての教育。教育原則、医師と司祭のための医学。 職業生活の秘教的基盤:人類と霊的世界への貢献としての職業生活。 秘儀参入の道としての日常生活。 第5年度の実習週間の一部は、スイス・ドルナッハのゲーテアヌム精神科学(霊学)自由大学の行われる予定。
推奨図書:
- ルドルフ・シュタイナー著『農業講座―農業を豊かにするための霊学的基礎』(GA327) 邦訳イザラ書房2000
Rudolf Steiner: Agriculture. Spiritual foundations for the renewal of agriculture. Bio-dynamic farming and gardening Assoc. Inc. Kimberton, PA, USA 1993- ルドルフ・シュタイナー著『社会の未来』(GA332a) 邦訳イザラ書房1989
Rudolf Steiner: Towards Social Renewal - Rethinking the basis of society. Rudolf Steiner Press. London 1999
